<レビュー>"最後の将軍" 周囲に担がれ、振り回し、振り回された人生〜
主人公は幕府にとって危険人物の子供として生を受けました。
そして権力者に担がれ、時勢によって幕府のトップとなりました。
優れた頭脳と行動力を持ち、周囲を振り回し、振り回された
”最後の将軍” 徳川慶喜の一生を描きます。
あらすじ
(前半)担がれる
主人公は尊王攘夷運動の中心となる水戸家に生まれました。養子となり、 一橋慶喜となった彼は周囲に期待され、担がれるようになりました。そして安政の大獄が行なわれ桜田門外の変が起きました。
(中盤)振り回す
朝廷と薩摩藩の圧力により、慶喜は将軍後見職となりました。権力を持ち、周囲の期待を集めますが逆に周囲を振り回すようになります。攘夷決行を指示しながら職を辞し、開国へ走るかと思えば港の閉鎖を主張しました。次第に朝廷、雄藩の中心人物は反慶喜の立場を鮮明にするようになります。そして将軍家茂が亡くなり孝明天皇も亡くなった事で、後ろ盾を失った状態での将軍就任となりました。
(後半)振り回される
将軍慶喜は雄藩との最後の会議も決裂した後、武力討幕をかわす為に大政奉還を決断します。ところがここから大久保、西郷、岩倉(薩摩と朝廷)に振り回される様になります。辞官納地により権力を失い、挑発により挙兵する事になり、官軍の印である錦の御旗の登場で賊軍とされます。江戸城を無血開城し謹慎生活に入った慶喜は、33歳から表舞台から姿を消し大正2年の77歳まで生き、水戸家の様式で葬儀を行いました。
まとめ
ペリー来航以来、混乱に陥っている政界に将軍後見職として期待されて登場した慶喜ですが、抗いがたい時勢に逆らいながら自ら幕府を葬る事になりました。
感想
慶喜の人生を振り返ると正解の道を歩んだとは言いずらいですが、正解の道は何であったの判断も難しいです。国として向かう方向は二転三転しましたが植民地にはされず、後に国力も付けることに成功しました。また、幕末の権力者は短命の者が多いですが、慶喜は長生きをした数少ない者の一人です。そう考えると彼は成功者なのかも知れないのです。